top of page

なにもない感覚の記憶

日常のふとした瞬間にスペインで過ごしていた時のことをよく思い出す。ふとした瞬間に感覚があの頃とリンクして、記憶がよみがえってくる。

仕事で来ていた相模原駅から次の仕事先へ行くため、ホームへ降りる下りのエスカレーターに乗り運ばれていると、ホームのフェンス向こうから何もない青々とした景色が見えてきた。


バルセロナからガウディの建築を見るために電車に乗り移動した。目的の駅で下車すると、本当にここか?と心配になるほど駅から見える景色は何もなくて、遠くまでよく見渡せる。電車を降りてすぐに一歩が出せなかった。

その時の「なにもない」感覚と相模原駅のエスカレーターに立つ自分が繋がった。

なんにもないなぁとエスカレーターを降りてホームを歩き出す。

感覚の記憶。体験した記憶は鮮やかだ。

最新記事

すべて表示

電車の虫

電車に乗っていると、突然首の後ろがもぞもぞっとする。ヒェッと反射的に手で首を触ると、なにかに触れる。とっさに掴んだ手を覗き込むとエメラルドグリーンの綺麗な虫が収まっていた。 さっき目の前に座っているおじさんおばさん達が必死に振り払っていた虫だ。このまま電車にいると潰されるか踏まれるかしてしまいそう、手の中に空洞ができるようにしてそのまま虫を掴んでおく。降りる駅までもう少し。一緒に降りてどこか緑のあ

電車にて

電車の座席に座り本を読んでいると、向かいに座っているおばさんが何か言ってることに気づき顔をあげる。 「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん」 と、おばさんはついさっきまでわたしの隣に座っていた女の子に声をかけている。ランドセルと帽子をかぶった女の子は小学校低学年位に見える。次の駅で電車を降りるようで、席から立ちドア付近で駅に着くのを待っている。おばさんの声掛けには気づかないのか反応がない。 駅に着きドアが開く寸

舞台

久しぶりにリノリウムに寝転がり、照明の吊られた天井を見ている。 床に直で引かれたリノは少し硬く、その下にあるだろうコンクリートの気配を背中に感じる。 劇場の天井は黒く入り組んでいる。照明、蛍光灯、パイプ、スピーカー、大量のコード、、、劇場にいるなぁ。と思う。この景色は小屋入りしないと見られない。やっぱりいいなぁ劇場。 舞台の端っこで私服のまま、舞台の空気を味合わせてもらう。今日は一日だけの手伝いで

bottom of page