top of page

公園の空いているベンチを見つけ腰掛ける。

座ってから、排除アートと呼ばれるような仕切りのついたものではなく、広々と座れるものだったことに気づく。久々にこのベンチに座った。何にもぶつからずにゆったりと座れる。


座ると鳩がどこからともなく集まってきた。餌をもらい慣れていてこのベンチに座った人がこぼすパンクズやもらえるもの目当てなのかと思ったら、目の前に広がる芝生になにかあるらしい。みなこちらを見ることもなく地面を突いている。

かなりの数が集まってきたのをぼんやりと眺めていたら、3歳くらいの男の子が遠くから一直線にこちらへ走ってきて鳩の群れに飛び込んだ。

鳩は餌が食べたい、こどもは鳩を追いかけたい。鳩と子供の戦いを見守る。

飛ぶのはかなりのエネルギーを使う、らしい。先日読んだ鳥類学者の本に書いてあったことを思い出す。鳩はなるべく飛びたくないようで、早歩きで走る子どもを避けていく。避けた先でまた餌を食べ始める。慣れたものだ。

逃げてきた鳩がわたしの足元近くまで寄ってきた。わたしは無害だと思われている。無害なのか、眼中にないのか。私の足元にも何かあるようで寄ってきた鳩は警戒することなく餌を突いている。ここは安全とやれやれといった風な落ち着きを醸し出しているようにも見える。

足を変に動かしたら驚くだろうと、組んだ脚を入れ替えたいのを我慢する。


追いかけて飛ぶ鳩よりも、自分の近くで夢中で餌をついている鳩の方がいまの自分には面白い。共存関係。お互い近くで好きにしているこの状況が面白く、地味な癒しをもらう。

最新記事

すべて表示

電車の虫

電車に乗っていると、突然首の後ろがもぞもぞっとする。ヒェッと反射的に手で首を触ると、なにかに触れる。とっさに掴んだ手を覗き込むとエメラルドグリーンの綺麗な虫が収まっていた。 さっき目の前に座っているおじさんおばさん達が必死に振り払っていた虫だ。このまま電車にいると潰されるか踏まれるかしてしまいそう、手の中に空洞ができるようにしてそのまま虫を掴んでおく。降りる駅までもう少し。一緒に降りてどこか緑のあ

電車にて

電車の座席に座り本を読んでいると、向かいに座っているおばさんが何か言ってることに気づき顔をあげる。 「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん」 と、おばさんはついさっきまでわたしの隣に座っていた女の子に声をかけている。ランドセルと帽子をかぶった女の子は小学校低学年位に見える。次の駅で電車を降りるようで、席から立ちドア付近で駅に着くのを待っている。おばさんの声掛けには気づかないのか反応がない。 駅に着きドアが開く寸

舞台

久しぶりにリノリウムに寝転がり、照明の吊られた天井を見ている。 床に直で引かれたリノは少し硬く、その下にあるだろうコンクリートの気配を背中に感じる。 劇場の天井は黒く入り組んでいる。照明、蛍光灯、パイプ、スピーカー、大量のコード、、、劇場にいるなぁ。と思う。この景色は小屋入りしないと見られない。やっぱりいいなぁ劇場。 舞台の端っこで私服のまま、舞台の空気を味合わせてもらう。今日は一日だけの手伝いで

bottom of page